そこまで思い出して、僕は思考を止めた。



そうだったな。

きっと今までの僕は、あまりにもあの記憶がつらくて、思い出せなかったんだ。

自分が化け物だと認めたくなくて。



でも今はちがう。

何も恐れず、思い出せる。



もしかしたら、いま自分が『選ばれしヒト』として目覚めたことで、少し性格も変わってしまったのかもしれない。





「たしかに……あの時の、力を使っている間の記憶はありません。」


そう言うと、女の人は答える。


「そのときは、お前の意志ではなく、『神の呪い』が勝手に力をふるったからだろう。

そんなことがないよう、お前はこれから、『神の呪い』を上手く自分の意志で使う術を学ばなければ。」



そうだ。


僕を鍛えてくれるんだったな。



それに僕は、


「よろしくお願いします。」


と、頭を下げた。




その僕の頭を、男の人がなでる。


見上げると、ほんとうに優しい、悲しい顔をしていた。




女の人もこちらに近づいてから、言った。


「私の名前は、カリア。好きなように呼べ。」



それに僕はうなずく。

「はい。」


すると男の人も言う。

「私はファギヌ。ファギヌ・サンだよ。ちなみにカリアは私の妻なんだ。」


と微笑む。



それにカリアと名乗った女の人を見ると、薄く微笑んだ。






それに僕も、今までとは確実に変わってしまった笑顔を浮かべ、名乗る。



さっき思い出した、ほんとの名前。






「レイシア。」






「僕の名前は、レイシア・ホールです。」