たしかあのとき僕は4才だった。
あの日は町で友達と遊んでいた。
すると、一人のお兄さんが僕のほうに近づいてきた。
僕はその人がだれか知っていた。
町で有名な、悪さばかりするお兄さんだ。
だから両親にも、あの人には近づかないように、と言われていて。
だからその日もその場から去ろうとした。
でも、そこで僕は動けなくなる。
お兄さんから目が離せなくなる。
違和感があって。
よく見てみると、あの日のお兄さんは、少しおかしかった。
焦点の定まらない目。
ふらふらと足取りもおぼつかない。
何より、そのお兄さんからひどく嫌な感じがした。
そのとき。
そのお兄さんの横を通りすぎようとしたおじさんが、いきなり吹っ飛んだ。
文字通り。
横に吹っ飛び、民家の壁にぶつかり、民家の壁も壊して、動かなくなる。
僕は見ていた。
お兄さんは軽く、ぽんっとおじさんの肩を叩いただけに見えたのに。
それからお兄さんの近くにいた人たちが次々と吹っ飛んだ。
吹っ飛んでは死に、吹っ飛んでは死んだ。
悲鳴が上がり、みんな逃げて行った。
だが、僕だけ動けなかった。
まばたきもしないで、目を見開いてお兄さんを見た。
指が
勝手に動く。
空中に光る模様が描かれていく。
頭に声が響く。
さあ、食べよう。



