「今私たちがお前に教えられる知識は、このくらいだ。
これからのことは、ゆっくり考えろ。」
そう女の人が言って、コートのフードかぶって、去って行こうとする。
男の人も、それに立ち上がり、フードをかぶる。
しかし僕は。
「待ってください。」
それに2人は振り返る。
僕はその目を見つめる。
迷わないように。まっすぐ。
「答えならもう出てます。」
それに、2人は驚いたように、目を見開く。
そして僕の目を見つめ、僕の中にある決心に気づいたように、顔を歪める。
それに男の人は、動揺を隠しきれないように、焦った様子で、だが声は僕をなだめるように優しく、言う。
「答えを焦る必要はないんだよ。
君の中の『神の呪い』は、まだ完璧には発動してないようだから、まだ『神の呪い』に侵されたりは……」
しかし僕はそれを遮る。
その男の人の優しさを、跳ね返す。
もう後戻りできないとわかっても。
この男の人の言葉が、人間として生きる最後のチャンスだとわかっていても。
「わかってます。」
はっきりと、答える。
前を見据えて。
ひどい結末が待っているのは、十分すぎるほど、わかっている。
馬鹿な話だと、わかっている。
僕の見つめるこの景色が、もう同じように見ることはできなくなる。
美しい景色を、美しいとは感じられなくなるのかもしれない。
それにこの僕の決断も。
あの憎い神様の思う坪かもしれない。
すべてすでに描かれた、シナリオの上。
僕はその上を、馬鹿みたいになぞるだけ。
だけど、僕は。
決めた。
「僕は、『選ばれしヒト』です。」
一瞬世界が。
すべての動きを
止めた気がした。



