そこまで聞いて僕はもう何も感じなくなっていた。
あまりにも、ひどい。
神様の創った人間によって、『呪い』が産まれたのだという。
それも神様の力を利用して。
そして次は神様が新しい『神の呪い』を産んだのだという。
人間を利用して。
こういうのが負の連鎖なんだな、なんて悠長なことを僕は考えた。
人間が愚かで醜い生き物だということは、もう2年前までに学んだ。
自分の身体で。
だから、いないとわかってはいたのに、神様に願ったんだ。
どうか、僕を助けてください、と。
なのに。
「…その『選ばれしヒト』が、僕だというんですか?」
自分でも声が震えてるのがわかる。
怖いわけじゃない。
悲しいわけじゃない。
怒りだ。
抑えられない、怒り。
このまま体が爆発するんじゃないかと思うくらい、体の奥底から怒りが吹き上げてくる。
それをどうにか抑える。
だってちがうかもしれないから。
僕の人生は、そんな最悪なシナリオに巻き込まれてるはずがないから。
だから僕は祈る。
どうか、この返事が肯定でないことを。
しかし、その僕の言葉に、女の人が苦しげに顔をゆがめて、だがはっきりとした口調で答える。
「……そうだ。」
それに思わず、ははっと笑ってしまう。
そうだ。そうだよな。
だいたい僕はいまだれに祈ったんだ。
神様か?
その神様が、僕をこんなシナリオにほうり込んだのに。
なのに僕にそう願わせたのが、神様なのだという。
僕をこんな目に合わせたのが、神様なのだという。
神様がやっていることは、確かにしょうがないとは思う。
だけど。
この抑えきれない僕の怒りはどうすればいい?



