あの場所から逃げた日から決めていた。
もう二度とあそこには戻らない。
もし次あいつらに捕まるときは。
捕まる前に、絶対に死ぬと。
「嘘だっ!!!また僕をあそこに連れて行くつもりなんだ!!いい加減にしてくれよ!僕が……僕が何をしたんだよ!!」
そこまで言って僕は、自分の死を確信する。
あいつらはいつも僕を、理由もなく僕を殴る。
僕が敬語を使わなければ殴る。
僕が目をみれば殴る。
理由は、僕が化け物だから。
下等な化け物が人間様に生意気なことをしてはいけないから。
だから今僕がしたことは、ありえないことだ。
やつらを見つめ、怒鳴ってやった。
それに僕は少しうれしくなる。
ああ。これで。
これでやっと死ねる。
今日はシューと遊ぶ約束をしたけど。
誕生日を祝う約束をしたけど。
結局叶えられない約束なんだから。
あの場所に戻るくらいなら。
死んだほうがましだ。
それに男の人は今まで優しくゆるんでいた顔を、真剣な顔に変える。
まったく雰囲気の違う、鋭い目だ。
ああ、やっぱり。
やっぱりこの人たちは。
するとそこで男の人は口を開いた。
今からこの人が言うことはわかっている。
『化け物』だ。
しかしその人から出てきた言葉は。



