誕生日
たんじょうび
タンジョウビ
僕の誕生日
呪われた日のはずなのに。
「でも………でも僕の誕生日は……」
やっと声を出してそう言うと、アルマさんがそれを遮る。
「ええ、そうね。あなたのほんとうの誕生日はわからないわ。」
そこで僕は自分の誕生日を思い出そうとする。でもその度に。
頭の中に響く声が。
ーーーー化け物。
でも僕の耳に、ひどく優しく声が届く。呪われた『誕生日』という言葉を、これ以上ないほど優しく言ってくれる声。
「でも2年前のこの日に『イルト』は産まれたじゃない。」
そこまで聞いて僕は苦しくなる。のどが締め付けられて、ひどく苦しい。目が熱くなって視界がゆがむ。
「それまでのあなたがだれであっても、あの日からあなたはイルトよ。お星さまが私たちに与えてくれたかわいい子供なの。」
涙がこぼれる。
「今日からこの日がイルトの誕生日よ。毎年お祝いしましょ。」
と言ってアルマさんが僕の頭を優しくなでる。
「あなたは私の子供なんだもの。」
そこで僕は前を見ていられなくなる。うつむいて、地面に落ちては染み込んでいく涙を見つめた。
「ああ、でも私の子供だとシューと兄妹になっちゃうわね。」
と言ってふふふと笑う。
「兄妹は結婚できなくなるから、それは困るわね。」
と言ったところで、いつの間にか泣いていたシューが焦って叫ぶ。
「か、母さん!」
それにまたアルマさんは笑ってからまた僕を見る。そして僕の顔をのぞきこんで優しく微笑むと、これ以上ないほど温かく抱きしめた。
「イルト。」
言いながら僕の背中に回した手で頭をなでてくれる。
僕は初めて声を上げて泣いた。



