と、そこで、
「イルト?」
と、シューが不安そうな顔で僕の顔をのぞきこんでくる。
僕ははっとしてから、笑顔を浮かべて、
「……シュー。ありがと。」
と言った。心から、笑って。
湖に着いて、ふたりで湖のまわりを一周する。
ゆっくり歩きながら、他愛のない話をして笑う。
一周し終わって、帰らなきゃいけないね、と言うとシューは寂しそうな顔をする。僕まで寂しくなる。
「また明日も来ればいいよ。」
と僕が微笑むと、うんっ!と心底嬉しそうにシューがうなずく。
それからシューは僕を見て、少し切ないような、恥ずかしいような、嬉しいような顔になって、
「来年の今日も、いっしょに遊ぼうね。」
と言う。それに僕は微笑んで、
「うん。そうだね。」
と答えてから、
「でも次はシューの誕生日だね。」
と言うと、シューがぱっと明るい顔になって、
「ほんとに?!」
と聞く。僕はまたははっと声を出して笑ってから、シューの手を握る。
「絶対約束。毎年シューの誕生日と今日に、こうやって遊ぼう。」
と言う。
ほんとに。毎年こうしていたいと思う。
いつもと変わらない毎日を過ごして、そして一年に一回、こんな特別な日を過ごすことができたら、こんなに幸せなことはないな、と思う。
そうして大人になって。
一生あの村にいて。
その僕の約束にシューは。
今まで見た中で一番の笑顔を浮かべた。



