僕は、自分がいつこの村に来たか知らない。

村にたどり着いてから、ずっと意識を失っていたから。

起きてからの記憶も曖昧で、どれだけ僕が病院にいたのかもよくわからない。



それが、シューが言うには、今日で2年にもなるのだという。

今日がアルマさんの家に来てから、1年くらいだとは知っていたけど、この村に来てからちょうど2年だとは知らなかった。



だから僕は、信じられないといった顔で聞く。

「………そうなの?」


するとシューがまた照れたように答える。


「うん。
だから。お祝い、したくて。」


と言って僕に首飾りをかける。

花の良い香がする。石が夕日を反射して、きらきらと光る。



「じゃあ、今日の朝シューが早かったのは…」

と僕が言うと、シューがえへへと笑ってから、

「森に石を探しに行ってたの。」
と答える。

「その石は昼間だと草に交ざって見えにくいから、早朝の暗いうちに森に行くといいってバルさんに教えてもらって。」



そう言うシューを見てから、自分の首にかかる首飾りの先の石を見る。たしかに若葉と同じような黄緑色をしていて、淡く光っている。


シューは暗いのが苦手なのに。

朝起きるのも苦手なのに。

一人で暗い森に行って探したのか。




それを考えると、なんだか泣きそうになる。



こんなに幸せな思いをしたのは、どれくらい久しぶりだろう。


幸せな記憶。昔の僕の幸せな…



と、そこまで考えたところで。



ーーーー記憶のほうはどうかね。



バルさんの言葉がやけに頭に響く。



記憶。この村に来る前の記憶。



そんなの。