「はあっ……。ねぇシュー。どうしたの?」


と、やっとシューが足を止めてくれたので、息を切らしながら聞く。

するとシューも少し息を切らせて、膝に手をついてうつむきながら、

「ん……ごめんね。」

と言ってから、顔を上げて僕を見る。その顔は、走ったせいで少し赤らんだ、しかしとてもうれしそうな顔だった。


僕に向かって満面の笑みを浮かべたシューは、息が整ってからも少し赤らんだ顔で言う。

「あのね。今日はね。
どうしてもイルトとふたりだけでいたかったの。」

それに僕は聞く。

「どうして?」



するとシューは家にいたときのような、挙動不審な様子ではなく、意味深げな、余裕のある顔をして、

「秘密。」

と笑った。



それから、
「あとで教えてあげるね。」
と付け足して、森を散歩し始めた。

僕も、それならいいか、と思ってシューに着いて行く。


そこでシューが、思いついたように、あ!と声を上げてから、

「そういえばさっき、イルトは今日は何しようと思ってたの?」

と聞く。それに僕は、ああ、とラニテイたちが来る前に僕が言おうとしていたことを思い出す。


そして、ははっと僕が笑うので、シューが不思議そうに僕の顔を見てくる。それに僕はシューの顔を見返して答える。


「それがね。」

「うん。」

「僕も不思議なんだけど。」

「うん。」

「森に行きたいって言うつもりだったんだ。」

「え?」


と、シューが驚いた顔をする。それにまた僕は笑ってから、

「シューがあんまり楽しそうに森のことを話すから、来たくなったんだ。」

と言う。そしてそれは事実だった。

シューが感じた、森の楽しそうな雰囲気を味わいたいし、今日は良い天気だし、なにより僕はこの森がほんとに好きだから。