と、思っていたがー…




「高橋ー!中庭で喧嘩してる奴いるぜ」


「高橋先生、数学の期末テストですが…」


「大変!!高橋!早く、教室戻ってきてぇ」

「高橋先生…」

「高橋!」



気づいたら、放課後だった。


「はぁ…」


また、電話できなかった。

妹尾からも、電話どころかメールも来ないし…

相当、体調悪いのかもしれない。


「…」

遅くなったけど、電話してみるかー…明日、学校来れるかも気になるし…


携帯を片手に職員室から出ると、数学準備室へと向かった。



ほとんどの生徒が帰ったから、もう呼び出しはないだろう。



ゆっくり、妹尾とー…




「たーかーはし!!」

「!?」


ドンっと背中を押され、あわや転倒してしまうところだった。

「ださ…」

「お前っ…ら」


ばっと勢いよく振り返ると、そこにいたのは安川と立川。

妹尾と仲が良い、二人。


「何してんだ?こんな時間まで」

「ちょっとね。あ、さっき泰葉からメール来たよ」

「マジか?何て?」

「明日も休むって」

「…そうか」


やっぱり、相当体調がー…


「高橋先生は、妹尾さんから何か連絡は?」

「あ…いや、何も」

「えー!?マジ?担任なのに…てか、それ以上なのにね」

ゲラゲラと、安川が笑いながら言った。


「高橋先生、頼られてないんですね」

笑顔で毒舌を言うのは、立川。

唯一、俺と妹尾の関係を知ってる二人なのだがー…




「うるせーよ!お前ら!さっさと帰れ!!」



何かと、うるさい。

その上、妹尾の絶対的味方。


「言われなくても、帰るよ。泰葉ん家、寄らなきゃいけないから」

「は!?」

「今日もらったプリント渡しに行くんですよ」


「…立川も行くのか?」

「はい」


平然と答えた立川。


「…あっそう」


この男だけは、何を考えているかわからない。
妹尾を好きだと言いながらも、俺たちを助けてくれている。


「高橋先生」

「あ?」

「男の嫉妬は、みっともないですよ」

「!!」

「立川サイコー!さ、早く行こう」


「それじゃ」



「…」




安川と立川がいなくなった後は、嵐が去ったみたいだー…