「先生…うつるから早く帰っ…」

「帰らないよ」

「…え?」

「妹尾の風邪なら、うつっても嬉しいからな」

「先生!」


起き上がろうとする妹尾を、ベッドに押し倒した。


「先生…」


とろんとした目を開け、驚いている様子。




「たまには、心配させてくれよ。いつも、俺ばかりがお前に心配かけて…情けないだろう?」

「情けないなんて…」


「今は、自分のことだけを考えてくれ」


そっと、頬にかかっている髪をどけた。


「早く治して学校に来い。お前がいないと、安らげる場所がない」


「先生…」


「寝た方がいい、ゆっくり休め…」



妹尾の目を手で覆い被せた。




「…はい」



妹尾は、小さな声で返事をした。




静かにベッドの上から下りると、妹尾が眠るまで髪を撫でた。