「…あなた様が晴信様なら良かったのに…。」 小さな声で娘はそう呟いた。 その瞬間、抱き締めてしまいたい衝動に駆られた。 本当に…愛らしいことを言う。 「晴信様に失礼であるぞ。」 内心、笑い出しそうになるのを必死に堪えて、からかうように言ってやった。 「すみませぬ…!…あの…あなたのお名前は…?」 娘を部屋の近くまで送った時に、不意に問われたが…。 「名乗らずとも、直に解る。今宵はゆっくり休め。…ではな。」 名残惜しかったが…そう、直に会えるのだ。 明日は、我が妻として。