だけど、健ちゃんは振り返らずに言った。 「人違いです。…行こう。」 「え…でも…。」 「行こう。」 健ちゃんの大きな手が私の手をぎゅっと掴んだ。 …少し痛い程に。 健ちゃんも…怖い…の…? ただならぬ様子を感じて…私も健ちゃんの手を、ぎゅっと握り返した。 そして…それ以上は何も聞かず、家に帰ることにした。 怖かったのは…。 あの女の子に…健ちゃんを盗られてしまうんじゃないかって…。 それが、怖かったの。