「そっ、そろそろ戻りましょうか。お昼の時間だし・・・」

菅田さんは私の手を優しく引いて、元来た道をゆっくり歩いていく。

私の勘違いかもしれないけど、菅田さんの手がさっきよりも熱い。

横目でちらっと菅田さんを見ると、すっごく赤かった。

あんまり見つめていたから、

「あんまし見ないで・・・」

と、菅田さんはまた赤くなって呟いた。

私も恥ずかしくなって、さっと目を逸らした。

そのままもくもくと歩き続けて、気が付くと私の病室前まで来ていた。

見慣れた扉に、『―306―皆瀬理佐様』というプレート。

「じゃあ、また午後にきますね。」

菅田さんは、まだほんのり赤い顔で微笑んで、ナースステーションの方へ帰っていった。

菅田さんの姿が見えなくなってから、急に寂しさが溢れてきた。




ちょうど食事のおばさんが来て、私は少し肩を落として真白の鳥籠へと戻っていった。