「……ぅ」

小さな声が聞こえる。

足音と共に。

「…紅っ」

お母さんの声だ。部屋の前まで来ている。

「紅!」

「聞こえてるよ。なぁに?」

切羽詰まったように、私の名前を呼んでいた。

…ただ事じゃ、なさそう…。

「帰って来たとよ!」

「…?誰が」

お母さんが、ドアを開ける。

私は、部屋に入って来たお母さんを見つめた。