ルイは考え事をしながらある町を歩いていた。


高い建物が立ち並ぶ町…

道の前後左右にビルが建ち、この小さな道には、太陽の光を導かない…

朝だというのに…
晴天だというのに…

今ここはまるで、暗い、夜のようだ…


現実と切り離されたように…
世界と切り離されたように…


風は、たまにやってくる…

髪を揺らす程の小さな風…
風など、無いに等しい…


風に揺れた髪を、手ぐして整えながら、建ち並ぶビルを見回していた…

そこへ、近寄ってくる人影…


 「あの…」

ルイに近寄ってきたのは女性。
小型な、少し遠慮がちに話しかけてきた彼女。

この町の人だろうか…


この暗闇の中では、はっきりした事はわからないが、彼女の顔色が、妙に青白いように見えた…

気のせいか…?


 「…?」


 「あの…助けて下頂きたいんです。」

 「助ける?」

ルイはその言葉を聞き返した。

 「はい…。私達毎晩うなされているんです。悪魔が襲ってこないかって…」


 「悪魔?」

悪魔と言う言葉で、ルイは顔色を変えた。

そんな彼の顔を、一瞬、光が差したかのように見えた…



 「あの建物の中に…」


女性は、ルイの反応に、暗闇に隠れるように口元を吊り上げると、ある建物へと指差した…


それは、嫌な雰囲気を醸し出した、人を寄せ付けないような建物…

窓ガラスは割れ、泣くように唸る風が、部屋のカーテンを揺らす…

入り口の扉は、巨大な鍵でしめられ、その上を、何十ものチェーンでぐるぐる巻きにされている…

何者かが侵入するのを、拒むように…



その建物を、青い瞳で見つめるシュウへ、建物へと吹いていた風がやってくる…

唸るその風…

冷たさを感じる…
風が刃を持っているように…
体は傷ついていないのに、痛みを感じた…