授けられた力・消えた記憶

ノワが目的としていた場所では、1人の女が、窓の外を見つめながら座っていた。

 「ノワ様…」

そう呟いた時だった…

      ガタン!

誰もいないはず…なのに物音が…

 「!?…」

胸騒ぎを覚えながら、リリンはゆっくりと音の方へと向かう。

そこで見たものは…

 「!!ノワ様!」

倒れ込むノワの姿。

 「…リリン…」

かろうじて顔を上げる事ができたノワは、リリンへと顔を向ける。

 「ノワ様!大丈夫ですか!?」

リリンはそんなノワの元へと走り寄り、体を抱きかかえた。

ノワの体は冷えきっていた…寒さからではない…

色白の顔が、いつも以上に青白く、血の気がない事がわかる…

腹部からは、大量の血…

すべてを悟ったリリンは涙ぐむ。

 「リリン…逃げ、ろ…」

力を振り絞り、声を出すノワ。

 「!何を言ってるんですか!」

 「いいから、逃げろ…」

 「…」

 「ノワールが、やって、来る前に…逃げ…!」

そう言うと、ノワは目を瞑った。そして、脱力感がリリンへと伝わる…

 「!!ノワ…様…?」

 「…」

無言のノワ。

 「…ノワ様!!」

動かなくなったノワを抱きしめ、涙を流すリリン。


全てわかった…

ノワの命の灯火が消えた事も…

それが、誰のせいなのかも…



廃墟の中、1人の女の泣き叫ぶ声が、響き渡る…