授けられた力・消えた記憶


だが、目の前のノワを見ても、ノワールはとどめをさそうとはしなかった…

何故…

それは…ノワは、ノワールの息子なのだから…

自分の息子に手をかける訳がない…


が、ノワは気に入らなかった。ノワールが見る自分を…息子として見る自分を…

強くしてほしかったんだ…なのに…

ノワは目の前にいるノワールを睨みつける。


ノワールは立ち去ろうとした。

が、足を止める。

その目が気に入らなかったのだ…
醜いものを見るようなその目が…

最後にノワールはノワに傷を負わせた…

深い傷だが、命に別状はない…
動かなければ…その場で安静にしておけば…


しかし、ノワは走った…

腹に空いた、風穴を押さえながら、ふらつきながら、約束を果たすために…


廃墟の中、ふらつきながらある部屋を目指して歩くノワ。

腹からは大量の血を流し、歩んできた道に、血の染みを作っていった…

霞む視界で何とか目的の場を確認する。

が…

 「…ク、ソッ…ウッ…」

もう歩む力が残っていない…
目の前まで来ているのに…かなわないのか…全て…かなわないのか…