授けられた力・消えた記憶


 「ここや…」

 「…何してんのよ」

イワンは首根っこを掴まれながら、上を指差した。

そこにあったのは、換気扇と思われる穴…人一人通ることはできる位の穴だ。

 「ここから入ってきとんねん…」

 「?」

よくわからないが、マイはイワンを放した。

すると、イワンは机に登り、

 「やから、ここを閉めれば…」

穴を塞いだ。

少しの沈黙…

悪魔の手が伸びてき、塞がった穴を開けようとする。

生唾を呑み、それを見つめる2人…

まだ悪魔は諦めていない…力ずくでも開けようとしている…

が…

      ゴン!

何かを叩く音…
悪魔が穴を開けたのか…それとも…

音と共に目を閉じていた2人は、ゆっくりと目を開き、穴を見つめる…

そこは塞がったまま…悪魔のいる気配はない…
悪魔は諦めて退いたのだ。

 「…本当すごいじゃないイワン。」

 「俺もやる時はやるんや。」

イワンの肩を叩くマイ。
イワンは少し痛そうにしたが、胸を張ってそう言った。

 「急ぐわよ。」

 「は?」

だがそんなイワンを放って、マイは走り出した。

訳がわからないイワン

 「ルイの所に」

 「!そやった」

そして2人はルイの元へ急いだ