授けられた力・消えた記憶


イワンと男の交渉は、マイを間に挟んで続いていた。

 「どうしますか?この方の為に、自らの命を捨てる事ができますか?」

 「…」

無言のままマイを見つめるイワン。

マイはそれを見つめ返す。その目はイワンに訴えかけている。
自分の事はもういいと…


 「無理のようですね。ならば、この方を…」

 「止めろ!」

男の言葉を遮るイワン。
今のイワンの目は、マイではなく男に向いている。

 「?やる気になりましたか?」

 「!止めて!イワン!」

イワンを何とか止めさせようと声を上げるマイ。

 「…」

が、イワンはマイを見ようとしない。

 「私なんか、どうなってもいい!だから、だから止めて!」

 「…」

マイは目に涙を滲ませ、訴える。
しかし、イワンは無言である。

 「で、どうします?」

そんな2人の行動に飽きたのか、男は先を促す。

 「どうするって?…こうするに決まってるだろ!」

 「!?バカな…」

イワンは男目掛けて飛び出した。