藤井先輩の私。

~綾女の回想~





「おいコラテメぇ、そこはあたしの席だよ。どの面下げてここに座ってやがる」



あたしの席は、窓際の一番後ろの席。


誰が何と言おうと、あたしの席。


うつぶせに眠っていたその男は、あたしの声に気付いたのか、目を覚まして顔をこちらに向けた。


どーっせ、しょっぼい男だろー…






「なんや、ここお前の席なんか?さっき席替えして俺の席になったと思ったんやけど…」






ドキ…




ドキドキ






ドキドキドキ













なんだ、この胸のざわめきは!


なんでこいつだけ輝いて見える?



息が苦しい…。



心臓の音がうるせぇ!!





「おい、大丈夫か?風邪ちゃう?」



ふわっと額に男の手が伸びる。



その男の手が額に触れたとたん、あたしの心臓は死ぬかもしれないと思うぐらいに飛び跳ねた。



「なんだ、熱はないな。よかった」



この関西弁の男。


いったい何者だ!?


あたしをここまで乱すなんて…きっとただ者じゃねぇ!!



「あたしに触るなっ!帰る!」


「ちょっ…」



あたしは後ろを振り向かずに、教室を出た。