藤井先輩の私。

 



プルルルルップルルルルッ…




『もっ…もしもし?どちらさまですか?』



おどおどした声が聞こえる。



「あたしや、杏奈」





『杏奈ちゃん!?え?』




「陽依、アンタに言いたいことあって電話した!」




受話器の向こうの陽依は、パニック状態。



『本当に杏奈ちゃんなの?』




「杏奈やてさっきから言ってるやろ?」



『うん』




「悠太と付き合いだしたんやって?」



『あっ……ごめん』



「なんで謝るん」



『………』



陽依は、困ったように黙り込んだ。



「アンタは、お兄ちゃんと付き合ってるんやから、自信持ち!」



『はいっ!』



「お兄ちゃん…よろしくな」



『うん』





あたしは、電話を切った。


陽依にお兄ちゃんを譲った。


あたしはお兄ちゃんのこと好きやけど、これは恋愛とちゃう。



ただの家族愛。



ただ、あたしはさびしかっただけ。

お兄ちゃんが離れていくのが。




オトンは仕事がいつも忙しくて、かまってくれへんかったから、あたしにはお兄ちゃんだけやった。




あたしももうお兄ちゃん離れせなあかんね。




「大丈夫か」



携帯を抱きしめて、うつむいてるあたしに、坂上が声をかける。



「だいじょうぶ。なんかスッキリしたわ。ありがとう坂上!」



「そっか」



「坂上ってええ奴やね?抱きしめて慰めてくれるなんて。だから女の子にモテるんやね~」



なんか、こいつが女子に人気あるの分かった気がするわ。



「さ、帰りましょー坂上さん♪」


鼻歌を歌いつつ歩き始めると、坂上がぼそっと呟いた。