藤井先輩の私。

あたしは、何も言わずに上履きから靴に履き替える。


あいつもイメージ崩したくないから、本性出さへんやろ。


よし、このまま帰ろう!




「ちょい、待てや」




へい?



いや、聞こえてない聞こえてない。


無視だ!



「何無視してんねん。コラ」




肩をぐいっとつかまれて、無理矢理振り向かされるはめになった。



くっそー。



「ここには人気はないしな。素でしゃべらせてもらう」



今ここで大声だしたら、誰か来ないかな。



「変なこと考えんなよ」


「うっ」




すっかりあたしの脳内お見通しやん!



「藤井さん、一緒に帰りませんか?」


「うえぇぇぇ!?」



なんだこのエセ優等生スマイルわ!

笑顔なのに腹黒さがにじみ出てて怖いやん。



「帰りましょう」



「か、帰ります。帰らせて下さい」



なんであたし、こいつに逆らえないんやろ。




二人で校門まで歩く。


道行く女の子が、すっごいこちらをじろじろ見ている気がするけど、きっと気のせい………じゃない。


女嫌いのクールボーイが、あたしと歩いてるんやもん。

明日、あたし先輩とかから呼び出しくらってボコられるんちゃうかな。



あたしは、全くその気はありませんから、みなさん安心してくださーい。


今すぐ大声で叫びたい。




「藤井さんの家ってどっち方向?」


校門でぴたっと坂上が止まるから、後ろを歩いていたあたしは、坂上の背中にぶつかりそうになった。


「えっ?なに?」



「藤井さんの家って右と左どっち?」


「右やけど」


そう言うと、坂上は無言で右の道へ進み始めた。