藤井先輩の私。

やばいやばいやばいやばいやばい…。




「なんや、藤井さん。彼氏やなくて“お兄ちゃん”に会いに行くんや」



「……カマかけたな?」



「ひっかかる藤井さんが悪い。藤井さんに彼氏いるって聞いたことないし。おかしいなって思って正解やった」





コイツのことカッコイイ言うてる学校の女子達に叫びたい。

坂上渉は悪魔ですよーって叫びたい。





「その様子やと、“お兄ちゃん”に連絡してへんやろ」



「うっ…」



するどい。


コイツ頭もいいんやったっけ。




「へぇ、藤井さんてブラコンなんやね」



「ブラコン言うな!」




ただお兄ちゃんが大好きなだけや。


一人占めしたいだけやもん。




「そんなキャリーバックもっていきなり押しかけても、“お兄ちゃん”困るんちゃう?」




……痛いところついてくるなぁ。




「お兄ちゃん優しいから大丈夫やもん…それに」



それに、このままお兄ちゃんをあの女に渡してたまるか。


阻止せなあかんねん。




「それに?」




「絶対に負けられない戦いが私を待ってる」



“そーなんです”
川平慈英さんの名言が脳裏を渦巻く。




「なにそれ」


鼻で笑う坂上渉。


ムカつく!!





「でさ、藤井さん。電車いいの?」





「あーっ!」



腕時計を確認すると、終電の時間をとっくに過ぎていた。