藤井先輩の私。

今日、久しぶりにお兄ちゃんに電話した。


前は、あたしから電話するよりも向こうからかかってくるほうが多かったのに。




「もしもし?お兄ちゃん?」



『あ、杏奈か?どうした珍しいな』



受話器から聞こえてくる、なんだか嬉しそうな声。




「えっとね、ちょっと悠太の声がききたくて…」



『そーか。ていうかなぁ、そろそろ“悠太”言うのやめてくれへんか?お兄様と呼びなさい』



お兄様なんて呼ぶかアホ。


死んでも悠太って呼んでやるんだから。



お兄ちゃんなんて呼びたくないもん。














『先輩、誰と電話してるんですか?』












…あいつの声。



あの泥棒猫の声や。




じゃあ、お兄ちゃん今、あいつと一緒にいるん?





『杏奈から電話やねん…っともしもし?杏奈?』





ずっとお兄ちゃんはあたしだけのものだったのに、どうして奪うの。



あたしだけの優しいお兄ちゃんだったのに。




『聞こえてるか?おーい杏奈』




「聞こえてる。お兄ちゃん今デート中なん?」



『ででで、デートやなんて…陽依がな、放課後一緒に帰ろうって誘われてん。で、今帰ってるとこや』



時計を見ると、5時過ぎ。


そっか、高校生は今が帰宅時間か。



あたしは中学生だし、1時間ぐらい前には家に帰ってる。



『ほな、切るで』



「ちょっ…待って!」



『なんやねん。俺と陽依のスウィートタイムを邪魔せんでくれ。んじゃな』




ブツッ……