「そうだ。今からでも間に合うんじゃない?コマやセイヤに連絡取ってみたら?」
「で…でも」
「私のせいで江梨香が“紅蓮祭”出ないなんて胸くそわるいんですもの」
胸くそってオイ。
そうだな。
今の時間だったらまだ走ってるし…。
「電話かけてくる」
「ここ病院だから外で電話するのよ!」
「はいはい」
あたしは綾姉に促されるまま病室を出た。
携帯を開くと、コマ達から着信とメールが数十件。
やっばいな~。
どう弁解しようか。
「う~ん…」
『…ですか!!?』
『治療法は!!』
病室を少し言ったところで、怒鳴り声がきこえた。
なんだよ。
ここ病院だぞ。
静かにしろっての。
そう言って横目で声の聞こえたところを見ると、チラっとおやじの顔が見えた。
え?
今の怒鳴り声っておやじ?
その部屋には≪診察室≫と札が貼ってある。
おそるおそる近づく。
「お、おやじ?」
そう呼びかけると、母さんの「あなた、江梨香よ」というこえとともに診察室の扉が開かれた。
中にはメガネをかけた医師と、あからさまに取り乱してるおやじと、涙を目にためている母がいる。
「なんで…どうしたんだよ?」
医師はあたしの赤い頭と特攻服に驚いているのか、戸惑いを隠しきれないでいる。
「この子は、綾女の妹です」
「そ、そうですか」
医師はゆっくりと口を開いた。
「では、妹さんにも聞いていただかなければなりませんね」
え?なんのことだよ。
暗い診察室に、煌々と光るレントゲン写真。
専門用語ばかりの医師の言葉。
頭が悪いあたしは何言ってるのかさっぱりわかんねぇ。
でも、だけど…
最後のことばだけは、理解できた。

