藤井先輩の私。

一カ月後。








あれから綾姉がいなくなった倉庫は、バイクの音が鳴りやむことはなかった。


あたしは、みんなに支えられて総長という立場にいる。


綾姉は、あれから一度もここに来ない。



二人で暮らしていたアパートからも姿を消して、両親の住む家に戻った。





不良なのはあたし一人。



でも暴走族ってーのに、昔から憧れてたし、暴れるの好きだから…ここは嫌いじゃない。



ただ…




綾姉がいないここは、少し…ううん。

結構さびしいな。







「昨日の暴走の件で天竜のやつらが文句言いに来てるんスけど!どうしますか!?総長!」



「…コマか」


「『…コマか』じゃないっスよ!どうするんスか?」


こいつの名前は、駒井太郎(コマイ タロウ)。

こま犬みたいな奴だから、コマ。




「何人来てる?」


「下っ端連中だと思うんスけど…だいたい30人程度っス」


「適当にやっとけ」



「えっ!ちょっと総長!?」


お前も幹部で強ぇんだから、ちったぁ自信持てっつーの。

飼い主に見放された犬みたいに、こっち見やがって。



「しゃーないな」



ま、そこが可愛いんだけど…。