…キラキラ光るお空の星よ~

目の前の部屋から幼い子供の歌声が聞こえる。

コンコンとノックして扉を開けるとベッドの上に夜空を見上げる男の子の姿があった。
顔には涙の跡が月明かりでキラキラと輝く。

私の姿を見て驚いてる。

「ママ!」

どうやら今回はこの男の子の母親らしい。

しかも私が母親になっているとなると現実世界の母親は…。

「ママ!ママ!
怖い夢見た!
ママが死んじゃう夢!
生きてるよね!?
何処にも行かないよね?」

私に体当たりするように走って抱き着いてきてボロボロ泣く男の子。

想像した通りこの子の母親は亡くなっているらしい。

そうなると私の行動は決まっている。

「ごめんね…。私は貴方のママじゃないの。」

冷たいかもしれないが、私はこの子の母親を知らないので成り代わることが、真似することが出来ない。
結局傷付けてしまうなら始めに本当の事を話してあげた方がこの悪夢から早く現実へ帰してあげられる。

早い子だとこれを言った途端夢が壊れて私は元のあの空間に戻る。

この子の場合世界が音をたてて軋んだものの壊れはしなかった。

「…嘘だ。
だって同じ匂いだよ?
同じ声だよ?
何でそんな意地悪言うの?
僕のこと嫌いだから?」

膝を立てて男の子と目線を合わせる。

「違うわ。
貴方の事が嫌いだから意地悪でこんなことを言ってるんじゃない。
私は貴方のママじゃないの。
貴方の事も知らないしママの事も知らない。
ただそっくりなだけの別人なのよ。」

…この流れも何回目だろう?
この子は私の話を受け入れないで世界が壊れるかな?
それとも話を聞いてくれないで母親として甘えてくる?
本当は期待に応えてあげたいのに…。

「…おばちゃん、どうしたの?
どっか痛い?
泣かないで。」

「え…?」

知らないうちに泣いていたらしく、男の子の小さな柔らかい手が涙を拭ってくれる。

「僕のママ泣かないから、おばちゃんはママじゃない。」

「そっか、ママ泣かないんだ。
おばちゃん泣き虫だから。」

「僕も泣いちゃうけどママはいつもにこにこしていてねって言うの。
ママも泣かないからって指切りしたんだ。」