「ちょっと待ってくださいね。すぐに先生を呼んできますから。」

・・・

「もう頭が出てきている。すぐに分娩室へ!」


おそらくさっきすれ違った男の人がこの子のパパであろう。

病院を出る瞬間、タバコに火をつけ、一段落終えたかの様に煙を吐いた姿を思い出した。

あんなのがパパでなくて良かったのではないか。と思ったのである。

そんなカトレアは旦那さんの代わりにアニーの手を握り、励まし続けた。

十分に生まれる体制になっていたおかげで、出産の苦しみも少しですんだ。

けれど早産だった為に、ようやくできたアニーの唯一の家族ともしばらく過ごせない日が続くこととなる。

アニーは先生から受け取った我が子に

「またあとでね」

と、おでこにキスをした。その顔には将来の不安は一切ない。そんな表情であった。