しばらくして、疲れた顔をしたマリアが帰ってきた。

扉を開けニックの存在に気がつくと、疲れがどこかに飛んでいってしまったかのように一瞬で笑顔になったマリア。

「あれ?どうしたの?」

弾んだ声でそのまままっすぐにニックの横に座る。

それもそうである。マリアは昨日の出来事を知らないのだ。

ニックが助けを求めるかのような目でロイドを見ている。するとロイドは

「実は昨日、ニックのご両親が亡くなってね。署でニックにいろいろ話を聞いてそのまま連れてきた。もうニックには身よりもないし、力になれたらって思ってね。」

「両親・・・?」

状況がつかめないのか、マリアはいぶかしげ顔をしている。

「僕を捨てた。」

一番分かりやすい的確な言葉であった。