そんなある日、一人の妊婦さんと出会った。
30週目で早産の危険があるので、入院することになったアニーである。


「私、初めての出産で分からないことだらけなのです。看護婦さんにはお子さんがいると聞いているので、いろいろ教えてくださいね。」


「大丈夫ですよ。アニーさん。私も不安で不安でどうしようもなかったです。でも子供のいる生活は良いですよ。今思えば、どうして悩んでいたんだろうって思いますから・・・」

カトレアはアニーにとって、ただの頼れる看護婦ではなく、先輩ママとして接していた。

それは気になる事があったからである。

入院を始めてまだ5日ではあるが、一度もアニーの旦那さんどころか両親すら面会にきていないのだ。

しかしカトレアは一看護婦として干渉出来ない部分もあった。

できる限り彼女の力ななろうと時間の空いたときはアニーの元に行くようにしていたのだが、カトレアがアニーの病室に入ると決まって、アニーは寂しそうに窓を眺めている。

アニーはカトレアに気づくと窓から目を離し、いつもの笑顔に戻る。そしてカトレアも普通に挨拶を交わす。

「今日の具合はどうですか?」

毎日同じ日常会話なのだが、いつも病室で一人で過ごすアニーにとって一番楽しい一時であり、カトレアもそれを分かっていた。