ニックが帰った後、カトレアは金縛りにあったかのように、目を見開き固まってしまった。

ニックはあの時の子供である!カトレアの頭の中にはそのことが確信にかわった。

しかしそんなことよりも気になる事が増えたのも事実であった。

聞いてもいないのにアニーの事を話していった・・・。そもそも、ニックは偶然マリアと出会ったのだろうか?それとも私の子と知って近づいたのか?

そこまで考えると一つの仮定がうかんだのである。

まさか昔、私がニックを殺そうとしたことを知っていて、何らかの理由でマリアに近づいた・・・?

仮にカトレアが殺そうとしたことを知っていたとするなら、その時の出来事を知っているのは婦長だけ。しかしその日の事を話すとはどうしても思えないのである。

「母のアニーがお世話になりました。」

ニックのそのたった一言が、カトレアを悩ますことになったのである。