「ママ、大丈夫?」

マリアが温かい紅茶を持って、心配そうにやってきた。

「ありがとう。もうニックのご両親には挨拶はしたの?」

横になったまま尋ねると、マリアは言いにくそうに話し始めた。

「彼に親は居ないわ。彼、施設で育ったの。」

「亡くなったの?」

カトレアの問いにマリアはいぶかしげな表情を浮かべ、話を続ける。

「お父さんは、彼が生まれる前に出ていってしまって、写真も一枚も残ってないから、どんな顔をしているのかさえ分からない。って言っていたわ。それとお母さんは・・・」

そこまで言うと、マリアの言葉が詰まった。

「いいじゃない!そんなこと!ニックはニックよ。・・・ママ、変よ。」

お母さんの名前が知りたかったカトレアだったが

「そうね。ニックはニックね。ごめんね。ママ、今日はなんだか疲れたわ。」

確かに黒い影以外にニックに欠点はなかった。現にロイドも気に入ってるし・・・。けれどもカトレアには何か良くない運命的なものを感じざるを得なかったのである。