手が触れた瞬間、以前感じたことのある、背中から冷たい何かが込み上げる感覚・・・

決して思い出さぬよう、心の奥にしまっおいたおぞましい映像が瞼の裏に映し出された。

美しい女性の横に立っている黒い影。それは、今、自分に向かって微笑みかけているニック。その人だったのである。

突然の寒気に襲われたカトレアは

「ごめんなさい。急に気分が・・・」

そう言ってニックから手を離した。

「それではこれで。」

「私、そこまで送って行くね。」

マリアとニックが出て行った後、ベッドで横になったカトレアだったが、体の震えは一向に取れる気配はなかったのである。