ただ、家に向かって歩いているだけなのだが、いつしか味わったことのあるような・・・しかも嫌な胸騒ぎがしてならかったのだ。

そしてカトレアが家の入口に着いたとき、その胸騒ぎの理由に気付いたのであった。


「突然の『氷』でまいりましたねぇ」

聞き覚えのある声に振り返ると、郵便局員の姿。

「こんにちは」

そう言って何通かの封筒や手紙をカトレアに手渡した。

「あれっ!おでこ怪我してますよ。これでよかったら・・・」

紺色のハンカチを渡されたカトレアは、それをおでこにあてると、ハンカチに少し血がついた。

「あら、本当。ちゃんと洗って返しますわね。」

「家に帰ったらすぐに手当てしてくださいね。」



そう、それは昨日見た『夢』と全く同じ会話だったのである。

・・・つまりこの扉を開けたら・・・


震える手で、カトレアは扉に手をかけたのであった。