ミリアムの指定した場所は、海が見渡せる地元では有名なデートスポットである。

しかし一歩、道を反れると断崖絶壁が広がっている。

もちろんそこに行くには『立ち入り禁止』と看板が立ててあり、滅多に人の出入りのない場所であった。

少し霧がかり、そんな場所にうっすらと人の姿があったのである。

「・・・ミリアム?」

ニックの問いかけに、その人物はゆっくりと振り返った。

「私は予言者。」

両手を広げ、ミリアムはそう叫んだ。

「どうしてアンナを殺したんだ!?」

怒りを抑えきれないニックはミリアムに詰め寄る勢いであった。

けれどそんなニックとは対照的に、ミリアムは冷静に言葉を発したのであったのだ。

「いいえ。私は予言者です。手を下す事はありません。ただ少し運命の誤差を正しただけ・・・。」

「つまり君にはアンナを助ける事ができたのに、それを見て見ぬフリをしたって事なのか!?」

「確かにそうね。私には運命を変える力はあるわ。けれど今、変えてしまったら全部変わっちゃうのよね。だから彼女には死んでもらわないと困るの。」

そう言ったミリアムは、遠目ではあるが少し笑っているのが伺えたのであった。そして更に話を続ける。