「どうかしたの?」

その言葉にニックはカトレアに気づいた。

「すみません。起こしてしまいましたか?今日から出張で・・・。」

そこまで話すと向こうの部屋から、マリアが走って来た。

「この人ったらいつもこうなのよ。土壇場になってから慌てるのよ・・・」

そう言いながら、着替えが入っている袋を手渡した。

「じゃぁ、いってきます。」

「あっ!ちょっと待って」

背を向け、扉に手を掛けたニックを呼び止めたマリアは、ネクタイに手を伸ばし、まっすぐに整えた。

「行ってらっしゃい。」

その二人の姿を見ていたカトレアは、昔の自分達の新婚生活を思い出して、温かい気持ちになった。