『マリア』

その言葉を聞いた途端、カトレアは寒気に襲われた。

学生時代にまだマリアとニックは出会っていないはずである。

実際にミリアムと言う人物が存在していたのか?

それともニックの想像なのか?

話を聞いて、すぐ黙り込んだカトレアを見て、トッドはカトレアの考えている事を察したのであろうか

「ミリアム・モーセと言う人物は、少なくともこの街には存在しません。誰一人として彼女を見た人が居ないと言う事から、ニックの想像であろうと私達は結論づけました。けれど一人だけ現れたのです。ミリアムと会った人物が・・・。」

黙ってうつ向き、話を聞いていたカトレアは驚いた顔でトッドを見返した。

「名前は『ジェフ』・・・ニックの幼なじみです。孤児院からの親友で、彼にだけは心を許していたようなのです。」

初めて聞く名前である。

親友だと言うのに、今までニックの口から1度も出た事の無い名前・・・。

つまりそれはニックが誰にも心を開いていない事を表していた。