生まれたばかりの天使の首に、広げた両手の親指を押し当てた。

「ごめんなさい。公園の約束守れそうにないわ。」

もうカトレアの顔に『白衣の天使』の表情は無くなっている。

大きく息を吸い、目を閉じた。


カトレアが指先に力を入れたその瞬間、閉じた瞼に明かりが差し込んで、ゆっくり目を開けた。

そこには電気のスイッチに手を伸ばして立っている婦長のシャロンがいたのである。

「何をしているのですか!?カトレア!」

首に押し当てた手が、何をしようとしていたのか物語っている。

カトレアは膝から崩れ落ち、下を向いたまま、全てが終わった。と、涙を流した。

何を話してもカトレアの空想にすぎない。

婦長の問いに何も答えられずに、うつ向いたままでいるしかなかっカトレアに

「今日は何も見なかったことにします。だけどあなたをこのままこの病院に置いておくことはできません。」

カトレアはゆっくり立ち上がり、頭を下げ病院を後にした。