家中にパンの焼ける香ばしい香りが広がっている。

そのせいかカトレアはどことなく我が家に帰ってきた様な錯覚におちいったりもする。


扉の閉まる音で気付いたのであらうか、奥の部屋からマリアが顔だけを覗かせた。

その時カトレアと目が合ったマリアは気まずそうに目をそらし、あえてロイドに

「いきなりどうしたの?」

「いや・・・どうしているのか気になってね。」

と、ロイドもチラッとカトレアをうかがいながら答えた。

そしてその奥の部屋に案内され、ようやくカトレアとロイドは、そこでニックと出会ったのだ。

突然の訪問に驚いたのか、頬張っていたパンを喉につまらせたように咳払いをして

「あれっ!?どうしたんですか?」

ニックの受け答えを見る限り、マリアがウソをついて家を出た事を知らない感じがする。