いつものように学校に行く。


そして、いつものように友達と話す。


そして、いつものように席に着く。


そして、いつものように先生が入って・・・。


「誰ー!?」

「ひぐっちゃんや!ひぐっちゃん!」

「ハハハッ。そっか、ひぐっちゃんか!」


いつもとは違った。


先生の後ろには若い男性が1人立っていた。


あの人が入ってくると、男子の1人、和真が茶化し始めた。


ひぐっちゃんっていうのは、不登校の樋口裕明(ひぐちひろあき)のこと。


「お前ら、失礼。」

「先生、誰なん?」


あたしも、思った。


先生と一緒に入ってきた人は、痩せてて、背が少し高くて、顔はまぁまぁ、童顔な人だった。


「えーっと、3週間みんなと過ごすことになった、教育実習生の戸川先生です。」

「何歳、何歳!?」

「下の名前なんち言うん?」


みんなのテンションがだんだんと上がっていく。


でも、私は全然上がらなかった。


菊池先生についてるんだから、理科の先生になりたいんだなぁ。


そう思っただけ。


普通、マンガとかだと“一目惚れ”そういう感じが多いけど、あたしは自分でどっちなのか良く分からない。


最初はそんなに惹かれなかったし。


そんなにカッコいいとも思わなかった。


「なぁなぁ!下の名前なんち言うん?」

「健太。」


初めて聞く声。


童顔の顔と合って小さい高い声。


「声たけぇー。」

「良い声しちょんなぁ。」


目立つ男子3人が集中的に戸川先生を責める。


戸川先生は恥ずかしそうに笑う。


すると、私の胸が少しキュンッとなった。


「(あれ?あたし、今キュンッてした?)」


心の中でそう思う。


あり得ない、マンガじゃないんだから。


生徒が教師に恋なんてあるわけない。


最初はそう思っていたんだ。


「じゃぁ、連絡に移ります。」


戸川先生の話が終わると、いつものように連絡が始まった。


戸川先生は両手にファイルを持って、静かに菊池先生の横にポツンと立っていた。