一気に失くした、食欲。


気付かれないように、


残りのタルトを押し込む。


冷めてきた紅茶で流し込んでいると、


ブルルルッ・・・


ケータイのバイブレーター音が響いた。


あたしじゃない。


ケータイの画面を見やった雅司が顔をしかめて、席を外す仕草。


大丈夫、って目で合図すると、席を離れた。


(彼女、か・・・)


・・・ハァ


溜息。


途端に、周りの喧騒が、音を大きくする。


視界を拡げると、


カフェにはカップルや友人同士で来ている客がいっぱい。


皆、笑顔でいる。


なのに、


あたし、一人ぼっち、


こんなに虚しい気持ち。


・・・馬鹿みたいだね。