「でも、啓太は引っ越していってしまった。祐太のことを思い出したくない、という両親の逃げでした。それからはずっと会っていませんでした。彼は、祐太の記憶と共に私の記憶も閉じ込めてしまったから」
“これが全てです”
マリさんは話し終えると、小さく微笑んだ。
知らなかった啓太の過去。
こいつは辛い過去を背負って生きていたんだ。
自分で記憶を消したとはいえ……。
寿々歌と共に宮崎へやってきたのは、偶然ではなかったのだろう。
こうして、マリさんと再会を果たすことになったのも全て、偶然という名の必然なのかもしれない。
「何だよ、結局一番弱かったのって俺かよ……」
啓太が目を覚ました。


