病院で俺達はその女性に話を聞いた。 鏡川マリという名の彼女は、啓太が海に飛び込む瞬間を見かけ、咄嗟に自分も飛び込んだという。 「私、啓太の幼馴染なんです」 マリさんはベッドで目を閉じたままの、啓太を愛おしそうに見つめた。 啓太の意識はまだ戻らない。 詳しい話は知らないが、啓太は九州の出身だったと聞いたことがあった。 彼女はきっと、啓太が九州にいた頃の友人なのであろう。 「啓太はもうきっと覚えてないと思います」 悲しげな目で、彼女は苦笑いをした。