俺は何も分かっていなかった。 ……親友なのに。 俺は寿々歌と共に逃げてしまったから。 傍にいた定だから分かるんだ。 寿々歌は口を固く結んだまま俯いた。 俺達は凛と啓太が経営していた店へ向かった。 そこで、啓太とは会う約束をしていた。 勢いよく扉を開けると、皮肉にも懐かしいベルの音が頭の上で聞こえた。 店の中も、家の中も、至る所を探したが、啓太の姿は無かった。 「手分けして探そう」 定の指示に、俺達は二手に分かれた。