ずるすぎる。
こんな不意打ち。

悪戯っぽそうな笑みを浮かべる寿々歌が、あまりにも愛しくて……。

彼女の目元にまだ少し残っていた涙を、指先でそっと拭った。
すると、彼女は今度は恥ずかしそうに微笑んだ。

「行こう」

俺は彼女の右手をとり、待たせている定達のところへ急いだ。
定は携帯電話で誰かに電話をかけている様子だった。
その隣で、七海が不安そうな表情で定を見つめていた。