事故のこと。
寿々歌が凛になったこと。
宮崎で再会したこと。
定に真相を聞いたこと。
凛と啓太が婚約していたこと。
寿々歌が記憶を取り戻したこと。
そして二人で東京に戻ってきたこと。

『……何それ。何も知らなかったんだけど私……』

七海にしては珍しい、落ち込んだような声だった。
そんな気持ちは分からないでもない。
俺も何も知らなかったことにショックを受けたから。

『ってことはさ……、今啓太は一人で苦しんでんじゃないの』
「分からない……」
『ほっとくの?! 親友のくせに?』

七海は俺を怒鳴りつけた。
何も言い返せなかった。