「……なぁ、寿々歌」 「何?」 「俺は本当に幸せなのかな……」 彼女は俺の言葉に不思議そうな表情をする。 「こんなに苦しい幸せは、本当の幸せなのか?」 啓太を苦しめて、俺は幸せになって。 それを本当の「幸せ」だと言うのなら、俺は幸せなんてほしくない。 心の中でそう思った。 寿々歌は下を向きながらか細い声で言った。 「私は幸せだよ……?」 その時の彼女の表情は、真っ直ぐに落ちる黒い髪に遮られて見えなかった。