「いらっしゃいませ」 ポニーテールを揺らしながら忙しそうに店内を動き回る女性が、顔だけこちらに向け微笑んだ。 目立つものではなく、どこか古ぼけた黄色のエプロンをした彼女はこちらへ近付いて「あちらの席へどうぞ」と言った。 その彼女の声、笑顔、出で立ちが俺の記憶とリンクした。 自分の記憶の中で検索する。 目の前の彼女と重なるその笑顔……。 「……寿々歌」 彼女は今も忘れる事の出来ない、 高校時代に愛した人だった。