「よぉ、大悟」
「あぁ」

素っ気無い挨拶。
右手を上げながらそう言う定の仕草に変わりは無かった。
学生の頃の俺はもっと元気よく「よぉ、定!」とでも言ったところであろうが、俺はもう学生ではないし、どちらにしたって今日はそんな気分ではない。

「じゃあ、行くぞ」

定はソファからゆっくり立ち上がり、スタスタと歩き出した。
定が話してくれるんじゃないのか?
後を追ってホテルの外に出る。
太陽の光があまりに眩しく、思わず目を細めた。

「なぁ、定! どこに行くって言うんだよ?」
「図書館だよ」

一瞬だけ定は振り返って俺の質問に答えると、真っ直ぐ歩き続けた。
図書館に何があるのか。俺には見当もつかなかった。